マーケティングの本を読んでいると、よく耳にする「自分ゴト化」。代理店のマーケッターも良く口にする言葉なので、ご存じの人も多いと思う。
代理店の紺ブレを来た人(古いイメージ?)が言うように、確かに自社のWebサイトや広告が、「他人ゴト化」されたか「自分ゴト化」されたかで広告の届き方に大きな開きがある。オジサンが「メイクアップ」の広告を見ても「自分ゴト化」されない(中にはいるかも!)し、女子高校生に「グルコサミン」の広告を訴求しても同じというわけだ。
一説では、私たちは1日に2,000社以上の売込み情報を目にしているという。考えてみれば、TVCM、新聞雑誌広告、インターネット広告、電車の中吊り広告、街中の看板と隙間あらば広告は訴求してくるのだ。それだけの大量の広告が脳に流れ込んでくるのだから、消費者は「関係ないものは見ない」というスキルが発達している。「自分ゴト化」とは、ターゲットに「これ、私のこと」と思わせることだ。
だって思い起こせば、毎日2,000社以上の広告を目にしながら、脳内に残っている広告はほんのわずか。それだけ「自分ゴト化」させるのは至難の業なのだ。
「自分ゴト化」とは脳を刺激して、「あ、これ、私のこと」と気づかせることだ。ただし消費者は、「自分ゴト化」されれば即行動をとってくれるほど甘くはない。
例えば「痩せるためには、食べないのがいちばん!」と笑顔で言われて、「そりゃそうでしょ」と納得しても、それを聞いて食事の量をすぐに減らす人は少数派だ。むしろ「自分ゴト化」されていても、何もアクションを起こさない人がほとんどだろう。
私は毎朝「痩せる宣言」をしているのでダイエットは「自分ゴト化」されていると思うが、夜食の後にお煎餅やアイスを食べてしまうし、ちょっと距離もタクシーに乗ってしまう。スポーツクラブに通うのもすぐに面倒くさくなってしまう。
下記のマトリックス図は、縦軸を日常的と非日常的、横軸を緊急度(高)と緊急度(低)に分けています。私が「自分ゴト化」しているダイエットの場合は、日常的に思っていながら緊急度が低いので、行動率は「中」となる何かの拍子に行動を起こすかもしれないが、のんべんだらりんと暮らしているということだ。
会社の給湯室を横切ったら、女子社員の噂話が聞こえてきた。「〇〇さんって太っているよね。私、デブってダメなのよォ」と陰口を聞いてしまったら、緊急度は高まり、人の行動率も相対的に高まるだろう。その陰口を言っていた娘が好きな人だったらショックは計り知れず、行動率は極限マックスまでたどり着く。すぐにダイエットの薬を買い、スポーツクラブに入会して、糖分を摂取するをやめたたりする。
つまり私が痩せるという行動を起こせないでソファに寝そべりながらお菓子を食べているのは、緊急度が低いから。明日、主治医に「このままでは死にますよ」と宣告されれば、途端に焦り出して日常的で緊急性の高い「自分ゴト化」に分類されて行動を起こし始めるというわけだ。
さて、広告戦略上では、日常的で緊急性が高い「自分ゴト化」でなければ、人は行動を起こさないとお話私しましたが、「いざ!行動!」というときに消費者の記憶に残っていることが大切。ですので、私たち制作会社は、うんうん唸りながら記憶に残るWebサイトや広告を、せっせと作っているだ。
豆大福(マーケッター)
「売れるWebデザイン」を提唱するアジャの頭脳。
アジャの企業コンセプトである「もっと売れる表現を!」を実現化させるために、
デザインの感性にマーケティング論を融合させる社内随一の論理派。