前回のコラムで、USP(Unique Selling Proposition)とは、自社の商品やサービスの持つ、独自の強みのことだとお話した。しかしここで覚えておいてほしいのは、USPは単なる「自社ならではの強み」ではない。「顧客に対して、自社だからこそ提供できる価値」こそがUSPなのだ。つまりユニーク(独自性)であり、顧客(ペルソナ)の胸を貫けるコミュニケーションであることが大切だ。
例えば、ニトリの「お、ねだん以上。」などは、模範的なUSPだ。「安くて質が高い」ものを消費者に提供するという企業コンセプトがスローガン(フレーズ)となってみごとに描かれている。
自社の商品やサービスは、消費者にどんな価値を提供できるのか? 他社には真似できない価値を提案できているるのか? そうしたことをうんうん唸って考えていくと、それが経営の背骨となっていく。商品をつくる基準も「お、ねだん以上。」のモノなのかが物差しとなるわけだし、消費者に伝える表現も「お、ねだん以上。」を効果的に伝えることが趣旨となるわけだ。
さて、USPは単なるメッセージでなく、ユニークであることが大切だとお話しした。ユニークとは辞書によると、「唯一であるさま。また、そのものだけが他と異なるさま。独特。無比。」となる。つまり他社にはない「独自性」ということになるのだが、それにはやはりペルソナに伝わる表現でなくてはならない。例えば吉野家のペルソナが「六本木ヒルズに住む高級志向の人々」と分析されたとしたら(ありえないけど)、「安い、うまい、早い」にはならず「超高い、超うまい」かもしれず、最高級和牛の牛丼を開発する必要に迫られるかもしれない。
つまりUSPは、ペルソナの人物像を眺めながら、ときには語り合いながら(光景を想像するとビョーキ)、USPをつくる必要がある。その結果、ときには商品やサービスを考え直す必要も出てくるかもしれない。言いたいことは、どんなに優れた商品やサービスでも、消費者にとって価値あることと認識されなければ、USPではないと言うことだ。
USPに取り組みはじめてよくあるのが、頭がだだ滑りをして、思考停止状態になることだ。会社のことでなくても、「自分のいい点を挙げよ」と唐突に言われても、答えに窮してしまうことは容易に想像できる。客観的に自社を捉える行為は、カンタンなようで難しい。そこで、そんな迷える子羊たちは、いくつかの質問を自分に浴びせて、答えてみるといいだろう。
ちなみに弊社のスローガンは、「もっと売れる表現を。」だ。弊社のペルソナは、「商品を売りたい企業の制作担当者」なので、彼らの願いを投影したフレーズを選んでいる。
【質問】御社には、どのような実績がありますか?
ナショナルクライアントから中小企業まで、数百社。
Webデザインからグラフィックデザインまで、20年以上の実績
【質問】お客様はどうして、御社を選んだと思いますか?
豊富なデザイン実績と柔軟なアイディア
【質問】御社が仕事をする上で、譲れないものはなんですか?
・売りを意識したデザインとコピーワーク
【質問】御社の商品・サービスで、競合に比べて負けないものはなんですか?
消費者に伝わる表現力
【質問】あなたの会社のファンは、どんな特徴がありますか?
おもしろくかっこいい表現が大好き
【質問】お客様に言われて、もっとも嬉しかった言葉はなんですか?
「おかげさまで、売り上げがアップしました」
こうやって自問自答をしていくと、なんとなく自社が見えてくる。何度も何度も同じ質問をしながら、作ったのが以下の文章だ。これはアジャのスローガンでありコンセプトで、弊社の方向性を示している。
もっと売れる表現を。
私たちは、クライアント様の「らしさ」と「利益」を追求します。よく考え、よく働き、よく話し合い、よく笑い。私たちは信頼を獲得しながら、「売れる」を考えます。思い起こせば、1982年以来、私たちは、ときには直接、ときには代理店と手を携えながら、よきクライアント様に恵まれ、ここまでやってこれました。手がけさせていただいたクライアント様は、ナショナル企業から中小企業まで数百社に及びます。そうした長い経験の中で、学んだことがひとつあります。クライアント様の願いも、私たちの願いも同じ。「もっと売れる表現を。」私たちは、アジャです。
豆大福(マーケッター)
「売れるWebデザイン」を提唱するアジャの頭脳。
アジャの企業コンセプトである「もっと売れる表現を!」を実現化させるために、
デザインの感性にマーケティング論を融合させる社内随一の論理派。